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お部屋貸します

男性には帰宅後に食事してから入浴するタイプと入浴してから食事するタイプがいると思う。僕は入浴してから食事をする。例え、妻を待たせるとしても先に入浴を済ませてから食事をする。夫婦で食事をする時間というのは黙り込んでもいられないし妻の話を聞き逃す訳にもいかない。いつだか米国の四こま漫画で如何に夫は妻の話をうわの空で聞き流しているかという話があった。新聞から目を離さずに会話する夫にうんざりした妻が頭からコーヒーをぶっかけた方が良いのかしらと尋ねると夫は僕もそう思うよと生返事をするオチだった。

ついで言えば、帰宅した時に妻の髪型が変わっていたかを思い出す時間も必要だ。ひと度、忘れると大変なことになる。帰宅した時に金髪になっているとかパンチパーマになっていれば分かる。しかし、彼女達が言うところの髪形を変えてみたというのは実はまったく分からない。新しい髪形だねと囁く男もいるらしいが、あれは一発させてくれという意味だろう。

入浴でリラックスできる人は羨ましい。雑事に追われることなく湯船に浸かれる。僕がゆっくり入浴できるのは出張先に限られる。出来るなら檜の浴槽を望みたい。木の香りは心を優しく撫でられるように感じる。ブナの木片を浮かべるのも心地よい。木々がもたらしてくれる安らぎは浴室の外にある緊張感を解きほぐしてくれる。森に足を踏み入れる時に嗅ぐ独特の香り。最後に嗅いだのはいつだったのだろう。肩車して歩いた森を思い出す。

とにかく、入浴でさえ面倒なのだ。何が面倒かといえば、棚に並んだシャンプーやリンスを眺めてどれも同じブランドであることを確認しないといけない。洗顔石鹸でさえ観察する。こういったことを怠ると後々が面倒なことになる。僕は結婚を否定はしない。寧ろ勧めたい。何が面倒か分かるからだ。とにかく女には敵わないと思い知らされるだろう。男の人生には経験しないと学べないことは沢山あると思う。男は単純だ。とても単純だ。僕は男の中でも特に単純な造りだと思う。僕のように一度で学べない奴も他にはいるだろう。だから、二度も結婚する。

ゆりちゃんは嫉妬深く執念深い。動物に例えれば蛇だと思う。育ちのよさは雰囲気に的確に現れ教育が大切であることを知らしめる女だ。しかし、その内面は常に他者と自分を比較する勝負事で溢れている。あの執念をもっと他のことに向けたら良いと思う。おそらくゆりちゃんの表現方法は家事なのだろう。非の打ち所のない献身的なサーヴィス。それが夫の全てを掌握するという激しい嫉妬と表裏一体であったとしても女性の情緒にはつきものだと諦めることにしている。それにしても、あれほど豊醸な胸と括れた腰、無駄の無い脚をもつといった見てくれの良い蛇はいないだろう。透いた肌、大きな瞳、長いまつげ、すっとなだらかに、しかし、高く通った鼻筋。奥ゆかしくおしとやかでピアノを弾く女。弾く曲はモーツァルトだ。僕にはよく分からないが、ままりんが言うには、そういう名前の人の曲だそうだ。

ままりんはヴァイオリンを弾く。それも、ヴァイオリンでワーグナーを好んで弾く。彼がヴァイオリンの曲を書いたかは知らない。とにかく、ままりんが弾くヴァイオリンはワーグナーだ。それ位は僕にも分かる。十五年前、その話を聞いた時は流石に腰が引けた。これ以上の説明は要らないと思う。蛇とは異なる恐ろしさを兼ね備えた女ということには間違いは無いだろう。ままりんはスレンダー美人で一人息子の涼と暮らしている。暮らし向きは悪くはないだろう。ゆりちゃんはきちんと化粧しないと気がすまないらしいが、ままりんは平気でスッピンで遊びに来るらしい。今の年齢でも素顔の美しさを保てるのは天性なのだろうか。その魅力はままりんの目に負うところが大きいと思える。妖しく美しい瞼というものを代表すると言っても過言ではないだろう。特に切れた目元が美しい。広重の描いた目がそこにある。

ままりんの息子である涼は母親の面影が色濃い。彼は中学校で幾度もおちゃらけて見せるけれどもカッコイイという印象を拭えず上級生も下級生も同級生もわんさか寄ってくるので辟易しているらしい。涼の背丈は僕より数センチは高い。野球部の一年生は何かと雑用が多いといつも文句を言う。丸く刈り込まれた髪も気にいらないらしい。ある映画で中学一年生の投手が活躍する話を持ちだしては、同じポジションの自分も彼に同意すると言う。とにかく涼の敵は数知れないだろう。涼には迷惑な話だ。しかし、ある程度は自分で撒いた種なのかもしれない。

日中のことだし、僕は同席しないからよく分からないが、とにかく、ままりんはスッピンで来るらしい。ゆりちゃんはうらやましいと口にする。そのことについて何がどう驚きなのか僕には分からない。ゆりちゃんもままりんもタイプが違いこそすれ、美しいという点では誰も異を唱えないだろう。ゆりちゃんも化粧をしなくても何も損なわないと言った時、急に猛々しい剣幕で怒り出して閉口したことがあった。僕の何がゆりちゃんを怒らせたのかは未だに分からない。

僕ら夫婦は3LDKのマンションに暮らしている。共有の寝室と二人で使う書斎、台所を併設した広いリビング。こういう環境で妻を怒らせた夫は酷い目に合う。手短に言えば自宅で独りになれる場所は極めて限られている。喧嘩等しないほうがいい。ゆりちゃんも喧嘩を望んではいないと思う。少なくとも僕は困る。些細であったとしても喧嘩、というより、ゆりちゃんを怒らせてしまうことを避ける努力は払わないとならない。

その晩、入浴を終えて脱衣所に出ると用意されている下着と部屋着を身に着けた。ちょっと説明が必要だろう。さぞかし出来た妻だと思うのは早計だ。たしかに快適だ。こういうサーヴィスはホテルでは絶対にないだろう。僕は楽が出来ているし、専業主婦の仕事はキリがないものだとも思う。しかし、窮屈さを感じないと言えば嘘だ。毎日、自分の下着さえも監視されているような気がしてくる。ゆりちゃんは、ゆりちゃんの母、つまりは義母と同じ事をしているだけだと言う。たしかに、ゆりちゃんの実家へ遊びに行くと実に快適だ。静寂さ、皿数の多い食卓、きちんと掃除の行き届いた和室、テレビの無いお茶の間。そして、常にタイミングよく差し出されるお茶。これは相当に鍛錬しないと簡単に真似られないだろう。そういう環境だから快適になりうる。義父がいなければ快適この上ないだろう。

ゆりちゃんは嫉妬深いと言ったが、それは僕以外の男と経験がなかったことと関係が有るのか無いのかは分からない。ゆりちゃんは他の男を知らないし興味も無いという。書斎で僕が眺めるサイトを観ては信じられないという。試しに抱き寄せていきなりその箇所を触ると全く感じていないことは分かる。男性同様に女性も本音が漏れ出る箇所は同じ場所についているものだと感心してしまう。これについては、秘書の一美も同じ事を言う。今では秘書と避暑して秘所を触る等と下品な話をするようなってしまったが、これは僕が仕込んだ。きっと悪いのは僕だろう。弁解の余地は無い。しかし、ゆりちゃんには秘書とベッドで何かをしていることは絶対に秘密だ。毎朝、スーツ姿で玄関に現れる運転手兼業の黒縁眼鏡が狐だと知られては困る。僕の財布にも限度はある。これ以上の慰謝料など支払い不可能だ。

自宅の玄関先でゆりちゃんは僕を見送る。笑顔だが本当の笑顔なのだろうか。一美は僕の後ろから歩いてくるがエレベーターに到達する寸前で僕の前に出てボタンを押す。さっと周囲を見渡して僕の股間に触れてくるのは余計なサーヴィスだと思う。手を振り払うと唇を尖らす。エレベーターの中で二人きりになると厄介そうだが、一美は身体を寄せてはこない。移り香を僕が嫌うからだ。香水臭い男の指示など誰が聞くのだろうか。仕事に差し支えることは一切避ける。地下二階にある駐車場にはステーションワゴンが停められており、一美が後部のドアを開けるとシートに身を預ける。友人達はもっといい車があると僕に意見するが気にしていない。広いから便利だ。それだけで充分だと思う。たしかに友人達同様にガラスはスモークにはなっている。

シートに腰掛けると脇には書類が山積みになっている。僕はタブレットという物を一美から手渡された時、目前でアスファルトに叩きつけてやった。タブレットに添えられていたあるドイツ車のカタログは壊れなかった。紙は叩きつけられても割れない。丈夫なものだ。僕は紙を使うから書類を抱えて車に乗り込む。これも友人達は古すぎると笑う。しかし、僕は効率よく快適に仕事をこなしたいだけだ。書類の脇に腰掛けると没頭してしまう。狐が運転席から僕の脚に手を差し伸べても黙したまま運転席の背中を蹴飛ばす。雑音はいらない。毎朝、変わることの無い僕の反応を見ていれば一美も飽きると思うのだが気づかない振りをしているだけなのだろうか。

助手席に放り置いた僕のスマートフォンが鳴った。一美は運転しながらスマートフォンに出たようだ。僕は書類に目を通している最中なので気配しか分からなかった。ゆりちゃんからの電話だったようだ。一美はままりんと涼が自宅に遊びに来ると報告した。ふと涼に約束したプレゼントを思い出した。そうだ、この前に約束していた。しかし、僕はそれを忘れていた。がっかりする涼が気がかりになり気が散漫になった。もう仕事どころではなかった。誰かに届けさせよう。一美が離れるのは不自由を強いられるが他に適材はいなかった。時間が分からないから車より電車の方がいいだろう。朝食会の後、僕は予定を変えた。僕はその店へ走り目的のプレゼントを買った。これなら涼は喜ぶだろう。さすがに僕がオフィスを抜け出して届けるまでする訳にはいかない。一美を呼びそのプレゼント自宅に届けるように命じた。



二階にあるフロントへ連なる駐車場に僕のステーションワゴンは滑り込んだ。午前二時を過ぎていた。別に一美と何をしたわけではなく、日常的な時刻での帰宅だった。朝は玄関まで一美が迎えに来るが帰りはその日の予定次第だ。細かな干渉をするのはゆりちゃんだけで充分だ。今日はちょっと気分が乗っていたので車を降りた後、ステーションワゴンの運転席脇に歩きガラスをノックした。音を立てずにガラスが降りると一美が怪訝な顔をしていた。一美の顎を軽く掴んでフレンチキスをした。ここは屋根があるので自宅のベランダからは車の様子は見えない。死角なのだ。僕は一美に言った。明日も同じ時間に。そして、おやすみと。僕は後ろを振り返ることなくドアを抜けフロントを通り抜け玄関を目指した。

午前二時であっても僕はドアチャイムを鳴らす。ゆりちゃんは必ず起きているから鳴らす。普段より赤ら顔をしたゆりちゃんのお喋りに付き合いながら洗面所、そして、脱衣所に向かい上着、ネクタイと順番にゆりちゃんに手渡した。既に僕の着替えが用意されているのが見えた。ゆりちゃんは涼がプレゼントを喜んでいたと伝えてくれた。そうか、あのプレゼントは間に合ったのか。微かに浮かべた安堵の表情を見逃さずにゆりちゃんは涼にまで嫉妬してみせた。煩わしいのだが可愛いとも思った。何故、可愛いと思ったかは分からなかった。何故、嫉妬が可愛いのだろう。ままりんが手土産に檜の積み木を持ってきたので浴槽に浮かべてあるとゆりちゃんは言った。ゆりちゃんの声はあまり満足げでなかった。

浴室内を普段どおりに一瞥し、身体を洗い、湯船に浸かった。均等に切り出された木片が浮かんでいた。木片の一つを手に取り眺めてみた。丁寧に涼という文字が掘り込まれていた。荒削りの文字だった。多分、涼が彫刻刀で彫ったのだろう。ゆりちゃんの声が満足げでなかった理由はこれだと思った。ゆりちゃんは涼が彫刻刀を使うことを好んでいない。その彫刻刀で彫られた木片だから気に入らなかったのだろう。涼の母であるままりんが許しているのだから何も問題は無いと思うがゆりちゃんの機嫌はやはり違うのだと感じた。その彫刻刀は少々厄介だった。

随分と昔だが涼に彫刻刀を手渡した時、ままりんは笑っていたが、ゆりちゃんは激高した。危ないという理由で激怒していた。男の子は小学生になったら刃物を使うべきだと僕は信じて疑ったことがなかった。だから、驚いた。彫刻刀を持ち歩いたら危険だと怒っていたのが理解出来なかった。男の子は刃物を手にすれば目を輝かせるものだ。そして、友達に見せびらかせたいと思う筈だ。実際、涼はとても喜んでいた。ちょっとした諍いになった。ゆりちゃんと僕の間では珍しいことだった。後日、彫刻刀は僕の家には持ち込まないということになったらしい。

浴槽に浮かぶ木片を次々と手に取り香りを味わった。涼という文字が刻まれた木片はどれもが香しいものだった。森を思い、幼かった涼を思い出した。森に踏み込んでいく時、下草が行く手を阻む。僕がその下草を物ともせずに踏みつけて進む度に涼は肩の上で喜んだ。今では涼も一人で森に入れる年齢だろう。そうだ、森に行こう。あのプレゼントは森には必要だ。ナタを振るいながら森に分け入ると男は子供になれる。元々、男は子供なのだとままりんは笑うがそれが正しい理解かもしれない。何にせよ、ゆりちゃんにはあのプレゼントは話せない。

浴室の防水時計を見ると既に2時半を過ぎていた。慌てて浴室を出て着替えてリビングへ行った。ゆりちゃんはリビングにはいなかった。夕食は必要ないと伝えていたからゆりちゃんは一人で食べたのだろう。もしかしたら、ままりんと涼の三人で食べたかもしれない。二人で使う書斎を覗いてみるとカウチの上でブランケットを被って眠っていた。僕とゆりちゃんで共有している書斎に無理やりカウチを持ち込んだのはゆりちゃんだ。もう一つ本棚が置ける場所にカウチを据えていた。なんのことは無い。眠る為のカウチが欲しかったのだけだろう。僕は書斎の目的とは違うと感じていたがゆりちゃんの望みどおりにした。そのカウチで眠るゆりちゃんを揺すって起した。淡いブルーのロングTシャツを着たゆりちゃんは寝ぼけたまま僕にもたれ掛った。

紅い顔をしたゆりちゃんの額に触れると熱があった。平熱ではなく高熱だった。僕はゆりちゃんを抱えて書斎を出た。書斎の隣にある寝室へゆりちゃんを運び僕とゆりちゃんで使うダブルベットにゆりちゃんを寝かせた。リビングへ行き体温計を持って寝室に戻った。ぐったりしたゆりちゃんの熱は39度に近かった。僕はリビングへ行き一美をスマートフォンで叩き起した。深夜の急な電話で一美は急に発情した。僕は甘えた声を出す一美を遮り、翌日の予定を全て取り消した。ゆりちゃんを放り出して仕事には出られない。翌日の指示を伝えてスマートフォンを切った。何度か電話がかかってきたが無視した。ダイニングへ行き冷蔵庫の内を確認した。どうやら食材には困らないようだ。僕はゆりちゃん用の御粥を作り終えてから寝室へ行き、ゆりちゃんの脇に滑り込んだ。ゆりちゃんを背後から抱きながら眠った。

翌日はいつも通りに僕は目覚めた。たった数時間の睡眠でも同じ時刻に目覚めるのが不思議だった。習性なのだろうか。ゆりちゃんの額に手をあてると相変わらず熱かった。そっとベッドを抜け出し、ダイニングでトーストを焼き、ベーコンエッグも作った。僕の作るベーコンエッグはベーコンが柔らかく卵は半熟だ。ゆりちゃんの趣味には合わないらしく朝食だけは僕は自分で用意する。カリカリになるまでベーコンを焼いて何が美味しいのか全く分からないのだが敢えて余計な事をゆりちゃんに言う必要はないと思っていた。オレンジジュースをグラスに注ぎ終わる頃、トーストもベーコンエッグも出来上がった。テーブルに並べ朝食を食べた。朝食を食べ終えた後、僕はスーツに着替えずに普段着に着替えた。この普段着でさえ僕は選ばせて貰えない。ゆりちゃんは僕を着せ替え人形と勘違いしているのだろうか。

寝室へ行きエアコンの温度を確認した。リビングに有った除湿機を持ち込んで動かした。再びリビングへ戻り薬箱の中を見ている時、ドアチャイムが鳴った。モニターに一美が映っていた。予定は変更した筈だとインターフォンで冷たく伝えると開けてくれなければ騒ぐと囁いた。これには困った。街中で隣人達とすれ違っても僕は気がつかないだろう。しかし、朝のこんな時間に騒がれては不本意な形で隣人達と挨拶をしなければならなくなるし二度とこういうことは起きないと約束させられる羽目になっていただろう。一美にちょっと待っていろと伝えてから玄関へ行き開錠した。

一美は大きなトランクを二つも抱えていた。僕のステーションワゴンにはまだ二つ積まれており、後で運んでくると言った。一体、何が起きたか分からなかった。一美に自宅は拙いと伝えたが聞き入れる様子は無かった。玄関に赤いヒールが並んだ。去年、一美にねだられて買ったヒールだった。仕事には相応しくないので履かせないようにしていたが今日はそのヒールを履いてきたようだった。おまけに、スニーカーまで玄関に並べた。流石に腹立たしくなり、ちょっと待てと言ったが一美は黙ったままとランクを持ち、書斎に入っていった。何故、そこが書斎だと分かるのか不思議だった。

リビングで無言のまま一美と対峙していると、ままりんと涼も訪れた。ゆりちゃんが大変みたいねとままりんは言った。これには驚いた。昨日に遊びに来ていた筈だし、ゆりちゃんが寝込んだことをどうやって知ったのか分からなかった。そもそも、涼は学校に行かなければいけない筈だった。二人とも大きな荷物を持っていた。一美といい、ままりんや涼までもが大荷物を抱えてきたことに僕は混乱した。三人ともここに住む気じゃないだろうなと言うと一美はそのつもりだと答え、ままりんと二人で書斎に消えていった。涼はプレゼントをありがとうと言い、それを見せてくれた。

やがて書斎からままりんの嬌声が聴こえてきた。涼がいるのに。どういうことだ。激しく書斎のドアをノックし、ノブを握ったが鍵がかかっていた。いい加減にしろと伝えたが何も反応は無く嬌声が止むことはなかった。リビングのソファに沈んだ涼が昨日のプレゼントの握り具合を確かめながらいつものことだよと呟いていた。



実を言えば嫉妬深いゆりちゃんがままりんと行き来していることに長年にわたり理解に苦しんでいた。ゆりちゃんとままりんは高校時代からの友達だ。二人で一人という位の仲良しだ。しかし、僕達の過去を考えるなら、行き来を続けられるということが出来るのだろうか。普通の神経の持ち主なら行き来できなくなると思う。何故ならば、ままりんと僕は結婚していた時期があったし、ゆりちゃんはそれを承知している。ゆりちゃんは僕がままりんと結婚する前、僕の彼女だったからだ。僕はたーちゃんと結婚せずに、ままりんと結婚した。数年後、ままりんと離婚後にゆりちゃんと結婚した。つまり、ままりんは僕の前妻だ。気持ちのいいものではないだろう。そして、涼は僕の息子だ。ゆりちゃんにすれば所詮は他所の子だ。

昔、僕が魅力的な二人組みの女子大生をまとめて軟派した時に最初に食べたのがゆりちゃんだった。僕はままりんの目前でゆりちゃんをゆっくり堪能した。電灯こそ消したがゆりちゃんを優しく剥がして抱いた。ゆりちゃんを抱きながら、ままりんは荒々しく剥がして縛り脇へ転がせた。徹夜でゆりちゃんを貪り尽くして過ごした夜から僕はゆりちゃんを手の上で転がした。そして、ゆりちゃんの嫉妬深さ、例えばままりんを裸にしたことへの嫉妬、に飽きると棄てた。面倒なことは嫌だったし、若いときは束縛を煩く感じるものだと思う。これは男の言い訳なのだろうか。

こういう経緯があったので、ゆりちゃんと結婚する時は大変だった。ゆりちゃんの両親を説得するのには三年もかかった。娘の友達と結婚していた男だ。許すとか許さない以前の問題だった。しかし、僕達は三年も辛抱したし、その辛抱がかなって結婚できた。だから、ゆりちゃんと結婚してからは他所の女には手を出していない。もう僕はそういう遊びを楽しいと思える年齢ではなくなっていた。僕の友人達はあまりに引退が早いと口々に言っていた。しかし、それがどうしたというのだ。煩わしいことは嫌いだし、面倒も厭だ。何しろ嫉妬深い妻というのは大変なのだ。蛇と暮らせばすぐに分かると思う。

嫉妬深いゆりちゃんに配慮して一美を秘書にしているのは訳がある。一美は男だ。一美は正確には男だった。とても綺麗な狐だ。でも、男だから秘書にした。ゆりちゃんが一美のお迎えを許してくれた理由は一美が男だったからだと思う。そうでもなければ早朝の出立と深夜の帰宅に添う秘書などつけられない。しかし、ゆりちゃんは僕が一美にも手を出すと最初から察していたかもしれない。多分、僕が一美を味わいたいと思いつく前にそれを察したのだろう。ゆりちゃんは僕の全てを常に知っていたのだろう。僕は一美がままりんと深い関係にあるとは知らなかった。想像すら出来なかった。一美の性欲は男性器に対してのみ発揮されると信じていた。そこが落とし穴だった。

僕が一美の欲望に応える前にゆりちゃんはままりんと一美を引き込んでいた。ゆりちゃんは嫉妬深いが貞淑な妻という仮面をつけて隙を伺っていただけだった。何のことはない。自分を棄てた男、そして自分の大切な友人を簡単に棄てた男への報復を誓っていただけだった。おそらく、僕がゆりちゃんだったら同じ事を考え付いただろう。友達の目前で処女を破った男だ。しかも、自分を棄てて最も大切な友達と結婚してしまった男だ。憎む理由は有っても愛し続ける理由なんかなかっただろう。僕はそんな簡単なことに気がつかなかった。

一美も雄の本能に逆らえないだけだった。ままりんと一美が僕の知らない場所で一緒になるのでなく、僕の目前で一緒になる。だから、ゆりちゃんは僕へ復讐できたのだった。そうだったのか。これは、ままりんとゆりちゃんによる僕への復讐だったのだ。僕も狐も雌たちの張り巡らした罠にはまっただけだった。書斎から響くままりんの嬌声、寝室の入り口に出てきたゆりちゃん。その罠に僕が気づいた時、全てが手遅れなのかもしれないと思った。もう、復讐は完成したのだろうか。まだ、未完成なのだろうか。熱気を帯びけだるい表情のゆりちゃんは蛇そのものに映った。

物憂げにソファに沈んだ涼はプレゼントの握り具合を試していた。母親の嬌声も母親の友人が蛇になっていることにも関心を払う様子は一切なかった。蛍光灯で刃を輝かせ角度を変えては光の行き先を追うだけだった。どうしたのだ、涼。お前も変わってしまったのか。お前も蛇が仕掛けた罠に嵌められてしまったのか。涼、ここを出よう。そして、僕と暮らそう。一緒に暮らすのだ。涼、僕を赦してくれ。しかし、涼の眼は氷っていた。



そのナタは僕を欲していた。














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