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京子さんが教えてくれた

誰にだって得手と不得手はあると思う。僕は丘の上でいつもテニスをしていた。急な坂を登りつめると学校があった。門をくぐりまっすぐに伸びる道に沿う最初のグラウンド、それがテニスコートだった。

同じクラスの絵里は僕に海の方が素晴らしいと常々に言っていた。僕にしてみれば海なんてあの道の向こうの世界だし。あんな際限のない世界に踏み出している人たちを心の底ではどうにかしていると思っていた。だって、海は眺めるものだったからだ。

テニスと言うとなにか華やかだと勘違いされる。きっと男性プレイヤーにしても女性プレイヤーにしても、封じ込められた立方体のなかで、そう、実は立方体なのだ、最速を求めているから派手に映るのだと思う。張りつめられた糸の先が何処に伸びているかを考え、その糸の先に気が付いてなんかいないふりをしながら狙われた場所に躊躇なく跳び、ボールを跳ね返す。僕はそういうスポーツだと思っていた。

多くのプレイヤー、それはどんなスポーツでもいいのだけれども、勝ったり負けたりすることってあると思う。ずっと勝ち続けるだなんて無理だ。そんなことが出来るのは限られた人だけだ。僕は平凡なテニスプレイヤー。まだ、高校生だったし、そんな奴は何処にでもいたと思う。僕は凡庸ではあるけれど最大限の努力はしたから授かった才能は使い切っていたとは思う。でも、僕だって欲張りだ。勝ちたいと思う。勝ったり負けたりだなんてよくある話だけれど絶対に負けたくないと思う試合だってあった。

屋外のコートに立ち、暖かくなってきた陽気を肺に吸い込み息を整えた。対戦相手はあいつだった。部内の練習試合だって負けたくはなかった。毎度の相手だし、試合前のコイントスとやる気のない握手には僕には勝ち目なんかありはしないという空気が流れていた。いつだってあいつが勝つ。そういう相手だった。でも、僕は負けたくはなかった。絵里が想いを寄せるという理由だけで僕は本気になった。

現実は残酷だ。絵里の前で勝ったことはなかった。そして、絵里の17回目の誕生日。また、あいつと対戦する機会が訪れた。テニス部でもないのに絵里はギャラリーに交じっていた。そして、僕ではなく、あいつを見つめていた。そう、熱い眼差しで特上の誕生日プレゼントを望んでいた。たとえ、それは僕には屈辱的な敗北であったとしても、絵里の誕生日プレゼントはあいつの勝利だった。

その試合が終わり、予想通りの結果が出た。その晩、どれくらい泣いたかなんて覚えてはいなかい。翌朝に涙は枯れたけど、もうどうでもよくなった。ラケットなんか道の向こうへ沈めてしまえと思った。だから、その日の朝は道を渡ろうと思った。握りしめたグリップを放す。もう十分だと思っていた。通学路に向かわず、反対側にわたるために信号機の前で止まった。赤いランプが蒼く変わるのを待つ時、京子さんに出会った。

そのお姉さんはまっすぐに視線を道のむこうにある海に注いでいた。まっすぐと背筋を伸ばし、セミロングのサーファーカットにした肌が浅黒く焼けたお姉さんだった。長い睫、通った鼻筋、遠慮がちな唇、その顔にゴムのような素材、ウェットスーツと呼ぶらしい、がすらりとしながらも張りのあるしなやかな曲線に張り付いた人だった。その黒いウェットスーツをみて、テニスウェアとは全く違う用途のウェアだと感じた。

そして、波にのる人たちって別世界の人だと改めて思った。こんな春先に海に入るだなんてどうにかしている。つま先に真紅のペティギュアが施されてサンダルを履いていた。無駄な肉をそぎ落とした踵が印象的だった。ここまで踵を削ぐのは簡単ではない。僕だって人並み以上には走りこんでいた。その落とし具合の難しさが簡単ではないこと位はわかった。

自分の身長より長い板を小脇に抱え、何かワイヤーみたいなものを持っているだけだった。鞄とかポーチなんてもちも物はなく、8.5フィートの板とワイヤー、京子さんが教えてくれたのだけれど、リーシュというらしい。ラッシュガードなんか着ていなくて、黒のウェットスーツだけだった。そういえば、板と僕が呼んだ時にはサーフボードと言いなさいと叱られた。

そのリーシュは板とくるぶしを結ぶ用具だった。なんでも、板から転げ落ちた時に流されないようにするための道具らしい。海に放り出されて板、ではなく、サーフボードがくっついていることの方が危ないと思ったけど京子さんには黙っていた。何か理由があるのだろうと思った。

京子さんに初めて会った時、つまり、僕がラケットを沈めるために横断歩道を渡ろうと待っていたとき、京子さんは信号が青に変わると僕をちらっとだけみて横断歩道を渡っていった。なんとなく後を追うようにして僕も横断歩道を渡り、砂浜に降りていく階段に腰掛け、京子さんが浜辺に歩いていくのを眺めていた。砂はさらりとしており、細かいとは言い難いうす灰色の砂だった。白いとは言い難い白い砂。そんな色だった。階段の一番したには京子さんが脱ぎ捨てた砂だらけのサンダルが転がっていた。

遠くに見える京子さんは立ち止まり、サーフボードを置き、かがみこんでなにやらしていた。リーシュを取り付けていたのよと後になって教えてくれた。すっと立ち上がった京子さんは髪を束ねた。影絵が髪を束ねた。それだけのことなのに、僕は見入ってしまった。何を見入ったか今では覚えていない。そのシルエットに見入りながら格好いいと思った。僕はそう感じた。砂浜の左側にぼんやりと半島が見え、砂浜の右側にはあれが見えた。何であれが人気なのか僕にはわからない。田舎にくる田舎者ってなんか変だなと思っていた。でも、同じことをクラスの友達も言っていたから満更おかしな感覚ではなかったと思う。

京子さんは髪を束ね、無駄のないシルエットを見せたまま海へ入り、パドリングしていった。そうだ、そうなんだ、パドリングというものを京子さんが教えてくれた。波に身をゆだねるけれども意思を持って進み、機会をうかがう。パドリングってそういうことなのだと教えてくれた。僕が立体形、天井は見えないけど、ぎりぎりにリターンした時、それってパドリングと同じなんだと思った。時間の長さは違う。でも、機会を伺うために足を止めないのと同じことなんだと思った。

自分で行きたい所へ自分で泳いでいき、機会を待てばいいのだと思った。きっと、京子さんがパドリングを教えてくれなかったらそうは考え付かなったと思った。海はこんなに広い。これだけ海は広いのだから遠慮なんかしなくてもいいのだと思った。

京子さんは僕より三歳年上の二十歳の女子大生だった。茶色い毛先は染めたのではなく、潮が自然と染めた色だった。京子さんのサーファーカットは本物だった。陸サーファーのそれとは違う本物だった。だって、サーフボードとリーシュしか持たないサーファーだったから本物でしかありなかった。せいぜい、細いアンクレット位しかつけていなかった。波にのる人ってこういう人のことを言うのだと思った。無駄をそぎ落とした姿だった。何度も京子さんを探して砂浜に降りる階段に腰掛ける日が増えていった。海の向こうに絵里は消えていた。

「いつも私をみているのね、何?」
京子さんから話かけられた時、心臓が破裂するかと思った。京子さんに問い詰められて僕は困ってしまった。京子さんから話かけられるだなんて想像もしていなかったからだ。僕は京子さんを見ていたけど、京子さんは波しか探していなかった。

たしかに毎回のように黒い詰襟の高校生が来ていれば気が付くのは当たり前だと思う。これは僕が後になってわかったことで、当時は分からなかった。気が付けば気になるだろう。そして、気になるというのは時として癇に障るという意味も持ち得ると思った。京子さんの邪魔をしていたかもしれない。だって、京子さんは波しか見ていなかったから。

問い詰められた僕はしどろもどろになった。何を話したかは忘れてしまった。とにかく、京子さんには僕の制服で近くの高校生だとわかっていたし、いつしか砂浜に降りる階段で顔を合わせれば話をしてくれるお姉さんになってくれた。オトナのお姉さんは高校生だった僕にはとても刺激的だったし、憧れだった。同級生なんかめじゃない。そう僕は確信した。でも、京子さんと肩を並べられただなんて奢りは微塵もなかった。

京子さんがサーフィンを終えて砂浜に戻ってくると背中のチャックを下す役割を僕に与えてくれるようになった。浅く日焼けした肌からは思いつかないような真っ白な背筋を僕は見た。そして、僕がその背筋に指をすべらせた時、京子さんは言った。

「教えてあげる」



ベッドが軋んだ。
二十年なんて年月はあっという間だ。あんなこともこんなこともあった。成功もあれば失敗もあった。富める時も病める時もあった。人生なんてそんなものだと思った。とにかく色々なものを抱え込み、そして嫌気がさして我慢が出来なくなった。僕はラケットを沈めようと思った時と同じように同じ砂浜に戻ってきた。僕が当時と異なるのはあのころの夢だ。パドリングに夢を感じた心なんてとっくに借金のかたにとられていた。

波は常に海からまっすぐに押し寄せては来ない。東から吹く風が時折に波を斜めに押しやっていた。白い沫が無数に現れては消えた。そうだ、こんな沫みたいなものだ。小さく、あっという間に消えてしまうものだ。愛おしいだなんて言葉は陳腐だろう。瞬時に現れて気が付くと消えている。それが波打ち際の沫だ。僕は沫だ。


相変わらず間抜けな半島が霞んでいた。右側のあれも相変わらずだった。砂浜をあるくと砂がシューズに入り込んでくる感覚を得た。テニスシューズでは絶対に歩けないような場所だ。乾いた砂は濡れた砂に変わり堅くなっていく。それでも砂は細かく万遍なく塞いでいく。まるで心の余裕を一つ一つ丁寧につぶすように入り込んで塞いでいく。そんな感じがした。

つま先が波打ち際に来た時、靴が濡れ、靴下が濡れた。そして、砂の底に沈められていく感覚を足の裏に覚えた。膝まで海に浸かってみた。波が引いていく時、足首は砂に埋もれていった。くるぶしは完全に飲み込まれていた。引き潮の度に深く深く、底に向かい、足を埋もれさせていった。そう、これでいい。このまま埋まる。そして、終わる。それを求めていた。腿まで沈んだ時、脇を誰かがパドリングしていった。

昔と変わらないサーファーカット、化粧水だけで充分な顔、細い体を8.5フィートの板にのせて通り過ぎる。そんな真似を出来るのは京子さんだけだ。そして、京子さんだと確信させた声。

「ボ―ド無しで何をしているのよ」
長いまつ毛に砂をつけた京子さんが振り向いた。

「今度は人生を教えてあげる」
京子さんが言った。

砂浜に連れ戻され僕は京子さんに抱かられて泣いた。あの試合後と同じくらいに泣いた。そして、学んだ。

京子さんが教えてくれた。









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